チャンスを引き寄せ決して逃さない──異色の経歴から見えることとは

チャンスを引き寄せ決して逃さない──異色の経歴から見えることとは

総合エンターテイメント企業であるポニーキャニオン。そのライブ・ECソリューション本部には、アーティストのファンクラブ運営を行うファンマーケティング部があります。今泉 佑理は、IT業界からエンタメ業界へと転職し、A&Rも経験した異色の人材。絶えず自分を磨き、チャンスをつかみ続ける貪欲な生き方をしています。

▲ファンマーケティング部、今泉 佑理。ピアノを習ったことがきっかけで、音楽が自身の身近なものになっていきます
▲ファンマーケティング部、今泉 佑理。ピアノを習ったことがきっかけで、音楽が自身の身近なものになっていきます

いつか音楽業界に……という夢を持ちながらITエンジニアに

“好きなアーティストのことをもっと知りたい、応援したい”というファンの気持ちに寄り添い、ファンマーケティング部にて、会員サイト管理やコンテンツ制作、グッズ販売、イベント運営などに携わる今泉。彼女が無類の音楽好きになるきっかけとなったのは、幼少期から習っていたピアノでした。

今泉

幼稚園生のときから10年くらい、クラシックピアノを習っていました。親の勧めで始めたピアノでしたが、始めてみれば楽しくて、レッスンに通うのも発表会に出るのも好きだったんです。中学校の合唱コンクールではピアノの伴奏を任されたりして、ピアノは自分にとって唯一誇れる特技でした。

中学生になるとアイドルやダンスミュージックなど流行りのJ-POPをたくさん聴くようになり、高校生の終わりくらいからはJ-ROCKにもハマっていって。音楽は常に自分の身近にありました

いっぽうで、高校生になり理系コースに進んだ今泉は、当時注目され始めていたIT分野に興味を持ち始め、大学では情報工学を学べる学部・学科に進みました。

今泉

将来のために手に職をつけておかないといけないという漠然とした不安を抱いていたのと、たとえばITエンジニアの仕事だったら、自分の気持ちを表に出したり、人とコミュニケーションをとったりするのがあまり得意ではない自分に向いているかなと考えたんです

大学でハードウェアの設計、プログラミング技術、ソフトウェアの開発、情報ネットワークの仕組みなどを学び、卒業後はIT企業でエンジニアとして働くことに。ゲームや携帯電話、WEBサイトのプログラミングのほか、カーナビにUSBメモリをつないで音楽を再生する機能の開発にも携わりました。しかし、今泉の胸の内にはある強い想いがあったのです。

今泉

音楽は変わらずに大好きだったので、将来的にはエンジニアとしてのキャリアを生かして音楽関係の仕事もしてみたいな、何かきっかけがあれば音楽業界に転職できないかなという願望はずっとありました

2005年から10年弱、IT企業のエンジニアとしてスキルを磨いていった今泉。「エンジニアとしてある程度の自信はついた」というタイミングで大きな転機が訪れます。

今泉

アニメソングのカバーアルバムやボカロコンピ、歌い手の音源制作に力を入れ、イベントも盛んに行っていたレーベル・エグジットチューンズに所属するアーティストのファンだった私は、当時ニコニコ動画での生配信もよく観ていたんです。するとある日、生配信内で『スマホゲームのエンジニアを募集しています』という発言があって、これってチャンスじゃないかなと思ったんです

ITエンジニアからA&Rへ、まさかの転身

▲人生の転機のたびにチャンスと考え、ポジティブに挑戦する気持ちを大事にしています
▲人生の転機のたびにチャンスと考え、ポジティブに挑戦する気持ちを大事にしています

今がチャンスだと思い立った今泉は、エグジットチューンズ社長が個人出展していた同人イベントに何度か足を運び、同氏に直談判しました。

今泉

『本当にエンジニア募集をしていますか、もしよかったら私をエンジニアとして雇ってくれませんか』とお伝えしたら、『そこまで言うなら話を聞こう』ということで、総務の方を紹介していただいたんです。あらためて受けた面接の際、当時システム担当をされていた方ともお話しして、『このスキルだったら大丈夫だね』ということで途中入社が決まりました

「自分の気持ちを表に出したり人とコミュニケーションをとったりするのがあまり得意ではない」人物とは思えない、驚きの行動力です。「とにかくチャンスは無駄にしたくなかったし、駄目だったら駄目でエンジニアとしてそのまま頑張ればいいという安心感もあった」と当時を振り返る今泉。ここぞというときに躊躇なく突き進む情熱、エンジニアとして築いてきたキャリアと自信が、念願の音楽業界への道へと導いたのです。

入社後は、IT業界のエンジニアとして積み重ねてきたキャリアを生かし、リリースされるCDや開催されるイベントのWEBサイト作成や、社内のサーバー、ネットワーク、パソコンの管理などのシステム業務に携わっていた今泉。

ところが、入社から1年ほど経ったころに社内体制が変わり、所属アーティストの育成やマネージメント、楽曲の企画・制作、宣伝戦略考案など幅広い業務をこなすA&Rとして携わることになります。職種が大きく変わることに不安はなかったのでしょうか。

今泉

もともと音楽好きですし、同じ社内でA&Rとして働く方たちを見て、いつか自分もそういう仕事に携われたらいいなということは漠然と思っていたので。エンジニアからA&Rになれるなんてなかなかないことだと思うし、このありがたいチャンスを逃してはいけない、新たな挑戦をしてみたい、そういうポジティブな気持ちしかありませんでした

未経験をカバーする熱意でA&Rとして順調にキャリアアップ

▲「仕事ではアーティスト撮影のスタッフ側なので、自分が撮られるのは照れくさいです」と笑う
▲「仕事ではアーティスト撮影のスタッフ側なので、自分が撮られるのは照れくさいです」と笑う

通常であれば、所属アーティストの作品を店舗に置いてもらえるよう販売店に交渉する営業部、アーティスト・作品のプロモーションをする宣伝部、音源・映像制作に携わる音楽制作部で経験を積み、キャリアアップしていく中で見えてくるのがA&Rへの道。ITエンジニアから一転してA&Rの歩みを始めた当初は、前向きな気持ちはあれど右も左もわからない状況でした。

今泉

先輩方も手いっぱいでなかなか教えていただく余裕もなく、見よう見まねでとにかくやってみるしかないというのが私のA&Rとしてのスタートでした。

音楽ゲーム好きの私は、まず音楽ゲームで活躍するアーティストを集めたコンピレーションアルバムを企画してみたんです。社内のいろいろな方から知恵をお借りして、助けていただいて、3カ月後のリリースを目指し手探りしながら動き始めました

10組ほどのアーティストに参加依頼をしたところ、今泉の誠意と熱意が伝わったのか快諾を得ることができました。

今泉

自分で企画して、手配して、スケジュール管理をして。3カ月間、もちろん大変なことはありましたが、好きなことだしどうにか形にしたい!という想いのほうが勝るんですよね。1から10まで全部自分で手がけたCDが出来上がったときに味わった達成感と感動は、今も忘れません。

それからはコンピレーション盤だけではなく、Ryu☆やかめりあをはじめとしたアーティストの単独音源の企画・制作をして、作品が出来上がったらニュース記事を書いて、SNSで情報発信をするというプロモーションもすべて自分で行い、エンジニアのスキルを生かして特設のWEBサイトを自分で作ることもありました

2019年、エグジットチューンズがポニーキャニオンと事業統合したタイミングでポニーキャニオン社員になった今泉が配属されたのは、音楽事業本部。それまでと変わらず、担当するシリーズ作品やアーティストのA&Rとして忙しい日々を送る中で、もっとも印象に残っているのはどんなことなのでしょうか。

今泉

音楽ゲームの音源をオーケストラカバーしてリリースできたことですね。20曲以上あったのですが、全収録曲の各楽器用譜面作成を依頼して、実際に各楽器のレコーディングにも立ち会って。リリース後に開催したコンサートでは、オーケストラの生演奏で感動するお客様の姿を見て私も感無量でした

ファンクラブ運営を担うその視線の先には、愛するタイドラマも

▲仕事でやりがいを感じるのは「ファンの方たちの喜ぶ姿やSNSでのコメントを目にする瞬間」と話す
▲仕事でやりがいを感じるのは「ファンの方たちの喜ぶ姿やSNSでのコメントを目にする瞬間」と話す

長くA&Rとしてキャリアを重ねていた今泉でしたが、2022年に思いがけない転機が訪れます。主にファンクラブ運営を行う、ファンマーケティング部へ異動することとなったのです。

今泉

異動に最初は驚きました。ただ、A&Rとしていろいろな経験はさせていただいたし、また新たな一歩を踏み出してみたいなという気持ちはどこかにあって。このチャンスも逃してはいけない、きっと自分の成長につながると思えたんです。

ファンクラブ運営の仕事は、おおまかに言うと“なんでも屋”だと思います。たとえばミュージックビデオの撮影やイベントがあったらその裏側、オフショットを撮ってファンクラブ会員のみなさんに一部紹介したり、スタッフブログを更新したり。

他にも、ファンクラブ限定の撮り下ろし写真を撮って会報誌の発行や、ファンクラブ限定グッズの考案・作成、ファンクラブイベントを企画したりと、ファンの方たちが喜んでくれるであろうさまざまなことを実施します。ファンクラブイベントで実際にファンの方たちの喜ぶ姿や、SNSで『イベントすごく楽しかった!』『イベントやってくれてありがとう』といったコメントを目にする瞬間は、すべての苦労が報われるし、大きなやりがいを感じます

ファンクラブ運営に携わるにあたって、大切にしていること、こだわっているのはどんなことなのでしょうか。

今泉

まず担当するアーティストの歩みや情報を隅々まで調べて、ファン目線に立ちなるべく多くのコンテンツをみなさんに届けるということです。現在担当するアーティストは、シンガーソングライターの阿部 真央、声優アーティストの花澤 香菜、バンドのHakubiとジャンルがバラバラで、そうなるとアーティストが希望する見せ方もファンの方が求めるものも変わってくるんですよ。

なので、各アーティストとの信頼関係もていねいに築きつつ、それぞれのファンの方たちにとって満足度の高いファンクラブとなるように、SNSの反応もチェックしながら、他のさまざまなアーティストのファンクラブ情報も調べつつ、日々模索しています。A&Rのときよりいっそう、ファンの方たちの存在を意識するようになりました。

阿部 真央は現在15周年イヤーで10月からはZeppツアー、2025年1月には東京ガーデンシアターでのライブを予定。また花澤 香菜は9月からZeppツアーを予定しています。コンサートやツアーではファンの方と直接接することができる大事な機会なので、ファンクラブでもなるべくファンの方に喜んでもらえるようなキャンペーンを実施したいと思っています

そうしたファンクラブ運営と並行して、現在、今泉が力を注いでいることがあります。タイドラマを日本でも盛り上げるべく、ファンミーティングを開催しているのです。

今泉

実はコロナ禍をきっかけにタイドラマにハマり、タイBL(ボーイズラブ)沼、タイGL(ガールズラブ)沼、というものがあることを知りまして。熱が高まるあまりA&R時代にはすでに“布教シート”ならぬ“布教資料”を作ってはいたんですけど(笑)、ファンマーケティング部の上司にそれを見せたら、『おもしろそうだね』と言ってもらえたんです。

タイのエンタメ業界になんのコネクションもなかったのですが、たまたま上司がタイの会社と仕事をしたご縁で、コンテンツライセンスのタイ大手企業Dream Expressさんに間に入ってもらえることとなり、そこから約半年ほどであれよあれよという間に話が進みまして。

2023年10月にはタイ国内初のGLドラマ『GAP The Series』の主演俳優を招いたファンミーティングを、4月にはアクションファンタジーBLドラマ『The Sign』の主要キャストを招いたファンミーティングを開催することができました。

SNSで盛り上がっていても実際にファンの方がどのくらい会場に足を運んでくださるのか未知数で、最初は不安だったんです。でも、蓋を開けてみれば大盛況で。タイ語どころか英語もままならない私ですが、強い想いがあれば言葉の壁も越えられるんです

然るべきタイミングでチャンスを呼び込む強い引き寄せ力と、チャンスを逃さない実行力。どうやら、今泉はそれらを持っているようです。

今泉

チャンスに出会えたら逃さないよう、常にそれをつかめるように準備はしているつもりです。何かやりたいと思ったら自分の中で常にシミュレーションしておくことが大事かもしれません

ITエンジニア、A&R、ファンクラブ運営とさまざまな経験を重ねてきた今泉。思い描いている未来像はあるのでしょうか。

今泉

いつかタイドラマをアニメ化したり、日本でリメイクドラマを作ったり、ポニーキャニオン出資でタイドラマを作ったりできたらいいなという願望はあります。そういう目標があると励みにもなるので。将来的に夢を叶えられたらいいなと思っています

※ 記事の部署名等はインタビュー当時のものとなります

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