相乗効果をもたらすWin-Winなタイアップ そのためにできること
アーティストや楽曲を知るきっかけともなる、ドラマや映画の主題歌や挿入歌、あるいはコマーシャルソング。そうしたタイアップを獲得するべく、松本 紘尚は日々考え、行動しています。入社5年目にして多くの経験を重ねてきた彼の、仕事に対しての誠実な向き合い方とその努力はしっかりと実を結んでいるのです。
自分の好きなことを仕事にしたい!揺るがない想いに導かれて
就職活動をするにあたって、「第一志望が音楽に関係する仕事だった」という松本。音楽好きな家族に多大な影響を受けた子ども時代を過ごしました。
松本
父の書斎からよくザ・ビートルズとかローリング・ストーンズが聴こえてきたり、兄2人は、洋楽だとハードロックやマイケル・ジャクソン、邦楽だと80・90年代のロックが好きだったり。自分の世代で流行っていた音楽だけでなく、上の世代が愛する音楽もたくさん浴びながら、自然と自分も音楽好きになっていったんです
音楽好きな少年は、高校まで地元・札幌の学校に通い、大学進学を機に上京。「一気に世界が広がった」と言います。
松本
もともとは札幌の国立大学が第一志望だったんですけど、記念受験的に受けた東京の大学に運良く合格してしまったんです。入学後、人の多さや夏の暑さにあまりにも驚いて、やっぱり北海道に帰りたい、と思うことも最初はあったんですが(苦笑)、たくさんの出会いがありそのどれもが刺激的で。高校時代に続き、大学でもバンドサークルに入って、われながら充実していた大学時代だったな、と思います
大学卒業後、どんな道を歩んでいくのか。多くの人が立たされる人生の岐路で、松本を突き動かしたのは“音楽が好き”という想いでした。
松本
兄2人が舞台や実演家の道をめざしていわゆるサラリーマンの道には進まなかったので、さすがに三男の自分はちゃんとした会社に就職して正社員にならないと親が泣くな、と思いまして(笑)。だったら裏方としてでも自分の好きなことを仕事にするぞ、という想いでエンターテイメントを扱ういくつかの企業の就職試験を受けました。
中でも、ポニーキャニオンは音楽だけでなく映画やアニメなどさまざまなジャンルを幅広く手がけている総合エンターテイメント企業。地方創生・地域活性化・地域ブランディングを行うエリアアライアンス部もありますし、もしかしたらエンタメ企業にいながら地元・北海道に役立つ仕事ができるかもしれない、その点も自分にとってすごく魅力的だったんです
2018年、彼は念願かないポニーキャニオンの新入社員のひとりとなりました。
入社2年目にして大型アイドルの専門チームへ
ポニーキャニオンに入社後、最初に配属されたのは自社のCD、DVD、Blu-rayや書籍、グッズ、チケットなどに加えて、限定商品などを直接ユーザー向けに通信販売を行う、コンシューマビジネス本部1部でした。ECサイト(PCSC:ポニーキャニオンショッピングクラブ)の運営・管理に携わる日々が始まりました。
松本
トラブルがなければ基本的にはある程度規則的で土日祝日は休みなので生活はすごく安定していて、学生時代の友達と会う時間もあり、仕事とプライベートのバランスが取れていました。
ただやっぱり音楽の現場に出るような仕事をしたい、という気持ちはなくならなかったんです。なので、音楽の部署の人たちと話す機会があるときに、『自分は音楽の現場に行きたいです』というアピールをしていました
その情熱が通じたのでしょうか。入社2年目にして、ミュージッククリエイティブ本部 制作部へと異動になります。しかし、配属されたのは予想外のチームでした。
松本
バンドやシンガーではなく、専門性の強いアイドル系のアーティストを扱うチームに配属されました。制作と宣伝、両方のアシスタント業務をやることになりました。
歌番組やバラエティ番組の収録、各媒体の取材、レコーディングやコンサートなどの現場の仕事、たとえば番組収録などは深夜までかかることもあったり、休日に出勤することもあります。
基本的に内勤中心だった1年目とのギャップがありすぎて最初は馴染めず、チームには熟練の先輩スタッフしかいない中で緊張感もすごくあり、入社2年目の右も左もわからない僕がここにいて本当にいいのか?と何度も思いました
プレッシャーを感じて、逃げ出したくなることはなかったのでしょうか。
松本
うまくいかないことは何度もあったし、ほんとに余裕もなくて。でも自分なりにもがきながらも楽しみ、先輩にフォローしてもらいながら業務にあたる中で、段々と生活リズムができてきました。
大変でしたが、今考えると“そこで踏ん張って本当によかった”と思います。どんなことがあってもアーティストファーストを徹底する。アーティストや所属事務所に対してどう接するべきか、アーティストに現場で気持ち良く仕事してもらうためにどのようにもてなすべきか、その心得が自分の中にしっかりとできました。
熱量の高いファンの方々に対してどういうサービスを提供するかという“ファンダムビジネス”から学ぶことも多かったです。俗っぽいことを言うとさまざまな現場で“THE 芸能界”を垣間見ることもできました。望んでも簡単には配属してもらえないであろうチームで本当にありがたい経験をさせてもらえたな、と感謝しています
プロモーターとして自社アーティストの魅力を伝え続けた2年半
制作部での慌ただしく濃密な1年を終えようというときに、まさかの事態に見舞われます。
松本
制作と宣伝両方のアシスタントとして仕事に慣れてきて、自分ひとりで担当できる現場が少しずつ増えてきた矢先に、ちょうどコロナ禍に突入してしまったんです。予定されていた現場仕事が一気になくなって、チームの解散とともに僕はメディアプロモーション部に異動することになりました。
テレビ局やラジオ局、出版社と向き合って、番組に出演させてもらったり曲をかけてもらったり取材してもらえるように、自社のアーティストを売り込んでいくのがメディアプロモーション、プロモーターの仕事です。約2年半の間、テレビ局、ラジオ局、出版社のそれぞれ何社かを担当していました。
コロナ禍真っ只中だったこともありリモートワークも活用しながら、自社のアーティストのリリースがあれば「ぜひ取りあげてください!」と各社に足を運びました。配属直後から自分なりの基本的な心構えをもって担当媒体の関係者とコミュニケーションを取ることができました。
きっと、制作部で制作と宣伝両方のアシスタントとしてたくさんのことを学んだ、2年目の経験が活きたんだと思います。
それに、自社のアーティストすべてを把握する、というのも楽しかったんです。いい曲だな、いい歌詞だな、いいアーティストだな。そうやって自分が感じた魅力を各媒体の方にどう伝えるか、それを考えるのも音楽好きにとっては幸せな時間で。
その結果、番組にブッキングしてもらえたり、曲をオンエアしてもらえたり、雑誌で取りあげてもらえたり。嬉しい瞬間はたくさんありました
プロモーター3年目には、半年間ほど名古屋の媒体も担当することになった松本。その経験も自分の財産になっている、と言います。
松本
半年という短い期間ではありましたけど、たくさんの出会いに恵まれました。その出会いはきっとずっとつながっていくと思います
タイアップ獲得は難しいけどおもしろい
そして、2022年10月。松本は、マーケティングクリエイティブ本部 メディアプロモーション部内のプロモーショングループからタイアップグループへ異動することとなりました。
松本
自社アーティストの楽曲をドラマ、アニメ、映画の主題歌やCMソングに起用してもらうべく動くタイアップグループは、経験豊富な先輩方ばかりでした。
プロモーショングループにいた2年半、プロモーターの僕が窓口だった、テレビ局のドラマタイアップがいくつか取れていたことを活かせる業務かな、とは思いつつ……入社5年目の自分がそこに配属されると決まったときには驚きました。またもや、若輩者である自分にそんな大役が務まるのかと多少不安な気持ちもありました。
実際、同じプロモーション部ではあっても、プロモーショングループとタイアップグループでは、やることもお付き合いする方も全然違うな、というのが異動4カ月目(取材は2023年2月末)の自分が感じていることです。
プロモーショングループにいたときは、たとえばテレビ局やラジオ局、出版社の担当者に自社のアーティストをプロモーションし、アーティストはプロモーションの一環として番組出演や取材など稼働する、というのが基本だったんですね。
ところがタイアップとなると、とくにCMタイアップの場合は代理店だけでなく、その先のクライアントや制作会社など、関わる企業や関係者の数が一気に増えるだけでなく、そこには金銭的なことも関わってきます。
発生する音楽出版権をどちらが保持するのか、そういう法務的な知識や交渉能力も必要になるし、音楽ビジネスを包括的に理解しておかないといけないので、とにかく日々勉強中です
あまたの競合がいる中、ドラマやCMのタイアップを獲得するのは容易なことではありません。「タイアップを獲得することは一筋縄ではいかない」というのが不文律の厳しい世界で、松本はあることを心がけています。
松本
自社のアーティストをまず自分なりにジャンル分けしておき、CMやドラマ、企業タイアップの話がきたら、すぐにその案件に合いそうなアーティストのA&Rに打診して、エントリーするアーティストをなるべく多くそろえるようにしています。
採用される確率をあげるためだけでなく、企画に合うアーティストを多く推薦することで先方にも信頼していただければ、それがチャンスにつながるかもしれないですから
また、入社2年目で学んだホスピタリティは、資料制作にも自然と活かされています。
松本
エントリーの情報がそろったら、A&Rから受け取った各アーティストの音源や紙資料を企業や代理店の方に渡すのですが、先方の提案に沿ったかたちにわかりやすく整えてからクラウドストレージ内に入れて渡します。
たくさんの提案を受ける先方が資料を見たときに一目でわかるように、それも大事なことだと思っています。その上で、電話やメール、オンライン、対面で楽曲やアーティストの魅力を自分の言葉で伝えます。まだまだ足りてない部分は大いにありますが、自分にできることは、すべてやるように心がけています
一度決めたらやりぬく強さと覚悟。松本には、それがあるのです。
松本
どんなに条件が厳しくても仕事である以上諦めるわけにはいきませんし、やらならければいけないのであれば、困難であっても最後までやり抜きたいと思ってます。そうすれば、どういう結果になったとしても後悔はないですから。
常にモチベーションを維持し続けるのは難しいことかもしれませんが、なんとかタイアップを取れたときには大きな達成感を得られるし、やりがいはすごくあります。楽曲とタイアップ作品の相乗効果によってさらなる価値が生まれたりもすることもあり、本当にワクワクするおもしろい仕事ですよ
4つの部署で怒濤の5年をポニーキャニオンで過ごしてきた松本。彼は今、どんな夢を描いているのでしょうか。
松本
新年度に向けてドラマ楽曲が3本、CM楽曲も3本、新しいタイアップが自分の担当媒体から決まっています。もちろん、アーティストの魅力があってこそではあります。でもそうした結果は自信にもつながります。この先も自分なりの丁寧な仕事を積み重ねて1本でも多くタイアップを取りたいな、と思っています。
今、マンガの単行本発売プロモーションの一環として、マンガとアーティストの楽曲を融合させるMMV(マンガミュージックビデオ)にも取り組んでいるんですが、いつかアニメや映画のタイアップも自分主導で決めたいですね。
新人や若手にもチャンスが巡ってくるのが、ポニーキャニオン。ありがたい環境で働けることに感謝しながら、自分がなによりも好きな音楽に携わる仕事を、これからも続けていきます
※記事の部署名等はインタビュー当時のものとなります。
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