大事なのはファンの目線に立つこと。生粋のエンタメ好きの想い
幼いころにエンターテイメントの楽しさを知って以来、真っ直ぐに好きな道を歩んできた深山 真希。ポニーキャニオンに入社後も、営業部、映像宣伝部、マーケティング部、制作部で経験を重ねながら、エンターテイメントを愛する気持ちは変わりません。数々のプロジェクトで閃き力を活かしてきたその歩みをご紹介します。
好きな気持ちのまま目指したエンタメ企業
「音楽や映像作品が好きな母親の影響で、小さいころからピアノ、エレクトーン、ドラム、歌を習って、テレビドラマもたくさん観ていたんです」という深山 真希。自然とエンターテイメントの世界に惹かれるようになっていきました。
深山
中学生のとき、深津 絵里さん主演のドラマ『彼女たちの時代』の挿入歌『I Want It That Way』でバックストリート・ボーイズを知って洋楽にどんどんはまって。その時代の音楽だけではなく、70年代、80年代のコンピレーションアルバムを聴いたりもしました。いつか音楽系の会社に入って海外アーティストの制作プロデューサーになれたらいいな、ということを考えるようになったんです。
一方で、小説や脚本を書くことにも興味があったので、高3で進路を決めるときには迷った末、芸術大学で脚本を学ぶ道に進みました
大学時代はドラマの脚本を書くことに没頭。しかし、卒業後は脚本家を目指すのではなく就職することに決め、レコード会社や映像制作会社などエンターテイメント企業を目指します。
深山
いざ就職活動を始めてみたら思っていた以上に大変で。でも、ある人から『まずはエントリーシートを出してみること。出さないよりも受かる確率は上がるから』と言われて、確かにやらぬ後悔よりやる後悔だ、と思ったんです。エントリーシートを書くって簡単なことではなくて何度も挫折しそうになりましたけど、縁あってポニーキャニオンに入社することになりました
入社当初、希望していたのは音楽や映像の制作部でしたが、まず配属されたのは営業本部東京営業所でした。
深山
入社してすぐ私が担当することになったのは、ヴィレッジヴァンガードや文教堂など、CDショップではない雑貨店や書店でした。何もわからないままに始めた営業の仕事ですけど、担当先の方々にとてもよくしていただいて苦になることはなかったです。
営業本部2年目は秋葉原のCDショップを主に担当。仙台や福島に出張することも度々ありました。秋葉原のCDショップでは、毎日のようにアイドルの方が出演するイベントがあったので、会社にいる時間はほとんどなかった気がします。忙しい毎日ではありましたけど刺激的で楽しい日々でした
作品プランナーとして知った喜び
営業本部で目まぐるしい毎日を送った2年を経て、第1映像制作部宣伝グループへ。そこでの深山の役割は“作品プランナー”でした。
深山
映像作品のリリースに合わせて宣伝をするために、何をするべきかを考えるのが作品プランナーの仕事です。加えて、当時はプロモーター(宣伝担当)がいなかったので、いろいろなメディアへの売り込みも自分で行っていました
韓流作品を主に担当していた深山にとって、中でも思い出深いのは、最初に手がけた『善徳女王(ソンドクジョオウ)』だと言います。
深山
『善徳女王』は、朝鮮史上初の女帝・善徳女王の波乱に満ちた半生を壮大なスケールで描く歴史大作ドラマで、韓国で50%近い視聴率を叩きだした大ヒット作品だったんです。プロジェクトのパートナーであるフジテレビの方と一緒に日本でどうやってこの韓国ドラマをヒットさせるか、プランニングを行いました。BSフジの放送に合わせて主演のイ・ヨウォンさんの来日イベントを企画したり、作品を見てファンになってくださった浅野 ゆう子さんにゲスト出演していただいたり、小倉 智昭さんや宮根 誠司さん、IKKOさんなど著名人の方々にオピニオンコメントをいただき、日本でもたくさんの方に観ていただくことができました。
1960年代のニューヨークの広告業界を描いたアメリカのドラマシリーズ『マッドメン』の宣伝を担当していたときには、『GQ』や『ハーパース・バザー』などの雑誌や、HAMILTONとのタイアップを行ったり、知り合いの芸能プロダクションの方に『所属タレントさんに観ていただければ』と言ってサンプル盤をお渡ししたら、多くのタレントさん、アーティストの方にハマっていただいたのも覚えています。
特に嬉しかったのは、サザンオールスターズの桑田 佳祐さんがご自身のラジオ番組で触れてくださって。桑田さんに届いただけでなく、おもしろいと言ってくださったことに、ありがたいやら驚くやら、その一件は今も忘れられません
「さまざまな施策を練って担当した作品が世に広まっていく喜びを知ることができる反面、宣伝の仕事は終わりがなかったりもします」と、当時を振り返る深山。もともとエンターテイメント作品が大好きだということもあって、その情熱が途切れることはありませんでした。
深山
どうやったら作品をひとりでも多くの人に知ってもらえるかを四六時中考えて、なにか閃いたらそれを形にするために手を尽くす。当時は自分をうまくコントロールできていなかったこともあり、ここまでやったら終わり、という線引きがきちんとできず、あれもしなきゃ、これもしなきゃ、もっとやらなきゃ、という終わりのない日々でした。体力的にも精神的にも相当ハードでした(苦笑)。
でも、やっぱり好きなことって頑張れるんですよね。宣伝グループでの怒濤の3年間、忙しかったけれどすごく充実していました
念願の制作部で送る充実した日々
入社から5年、営業、宣伝の仕事を経て、マーケティング部へと異動になります。
深山
作品をリリースするにあたりどれだけの予算が必要で、その結果どれだけの収益があるのか。それまでなんとなくはわかっていたことを、マーケティング部に異動してからはしっかりと意識するようになりました。
マーケティングのチームメンバーとすごく仲良くなったからでしょうね。数字に関してシビアに向き合いつつ他部署との交渉や社内調整を行うという、自分にとって新たな挑戦の日々もすごく楽しく過ごせていた気がします。マーケティング部を経て制作担当になったことで、クリエイティブとビジネスのバランスの重要さを知れたことも私の中では大きく、経験してよかった4年間でした
マーケティング部での4年間を経て、深山に転機が訪れます。2016年にもともと望んでいた制作業務に携わることになったのです。
深山
レコード会社に入ったからには制作の仕事をしたい、と思っていたのでこの異動は素直に嬉しかったです。
2016年に配属された部署は当初、現在のように音楽、アニメ、ビジュアルなどジャンルで分かれておらず、クリエイティブ全般を集約した組織でした。そこでは芸能プロダクションに所属する若手俳優の写真集やイメージDVD制作、韓国俳優のノ・ミヌの音楽プロデュース、舞台の映像化など、映像と音楽、その他なんでも作り出すチームに所属していました。
2017年に部署名がビジュアルクリエイティヴDiv.になってからは、劇作家・末満 健一さんがライフワークに掲げ、ワタナベエンターテインメントが主催・企画・製作する舞台『TRUMPシリーズ』のDVDや周辺ビジネスに携わるようになりました。『TRUMPシリーズ』ピースピット2017年本公演『グランギニョル』は、仕事で初めて人目をはばからず号泣してしまった作品です。本当に胸を打たれ、この作品をもっと多くの人に知ってほしい、感動をたくさんの人に味わってほしい!と思い、全国の映画館でライブビューイングを行ったり、コロナ禍に突入してからは配信も行ったり。TRUMPシリーズinfo(ポニーキャニオン公式@trump_pony)というアカウント名で、ツイッターでの情報発信にも力を入れています。
また、ポニーキャニオンでは浅田 真央さんや高橋 大輔さん、羽生 結弦さんなどフィギュアスケーターの映像作品も多数手がけています。浅田 真央さんが引退するタイミングでドキュメンタリー作品『浅田 真央『Smile Forever』~美しき氷上の妖精~』を制作することになったときは、Blu-ray&DVD発売に合わせて日本橋の百貨店での『浅田真央展』を実施し、DVDのみならずグッズも企画・制作しました。
このグッズ制作はイラストレーターのいわにし まゆみさんという方が、浅田 真央さんの引退タイミングでとてもかわいらしいイラストをSNSにUPしていて、ファンの方の間で盛り上がっていたのがきっかけなんです。このイラストでグッズが作れないか、浅田 真央さんにご相談したら快諾くださり、いわにし まゆみさんにコンタクトをとって、どんどん大きなプロジェクトになっていきました。これがきっかけで、いわにし まゆみさんは浅田 真央さんのアイスショーのロゴを手掛けるなどでご活躍されています。そういう出会いを作れたこともプロデューサーとしてとても嬉しいです。
その他、宇野 昌磨さんのBlu-ray&DVD『未完~Believe』や、高橋 大輔さんの写真集『氷艶hyoen2019-月光かりの如く- Official Art Book』に関しては、『担当させてください!』と事務所にかけあったりも。たまたま自分の友達が熱心なフィギュアスケートファンで、制作の仕事をする以前に大会やアイスショーを観に行ったことがあったりもしたので、楽しみながらいくつもの作品を担当させていただいています
ダメ出しから学ぶこともある
NHKの教育エンターテイメント番組『おかあさんといっしょ』のパッケージ制作に加え、最近では音楽配信や映画出資、『おとうさんといっしょ』のグッズ制作も行っています。
深山
さまざまなジャンルのエンターテイメント作品に携わるにあたって欠かせないのは、挑戦心や好奇心。そしてファンの目線に立つ、ということも重要です。
深山
制作側の“こうしたい”“こう見せたい”という意向はもちろん大切なんですけど、ユーザーの求めるものが何か、ということに私はなるべく寄り添いたいと思っています。作品そのものにしてもDVDやグッズなどのプロダクトにしても、作品やアーティストを愛して止まないファンの方に喜んでもらえるかどうか、それが一番大事。妥協はしません
信念を持って制作の仕事に向かう深山。同時進行でさまざまなプロジェクトを抱える大変さはあれど、そこには大きなやりがいがあります。
深山
忙しくなってくると、頭を切り替えるのが難しくて(苦笑)。そういうときは、ドキュメントにやるべきことを全部書き起こして、脳内を整理するようにすると、精神的にだいぶ楽になります。
企画がなかなか通らない苦労も知っていますが、一緒に仕事をする人からダメ出しをされるとき、そこには自分にはない発想があったりもするんです。作品やグッズ、イベントに関して意見を交わすことで関わる方たちと信頼関係を築いていく過程は、自分のやりがいにつながっていると思います
さまざまなジャンルのエンターテイメント作品に関わり、たくさんの閃きを形にしてきた深山。「ポニーキャニオンに入社してからの15年が、自分を成長させてくれた」とも語ります。
深山
入社当初は自分の主張ばかりを通そうとしていたと思うんですね。でも、営業、宣伝、マーケティング、制作とさまざまな経験を重ねる中で、人の意見を踏まえて自分の主張も織り交ぜて、バランスを取れるようになったと思います。あと、仕事上でたくさん転んだり、躓いたりしたことで、ちょっとやそっとのことでは動じない強さが備わりました。
作品やグッズ、イベントの企画を立ててそれが通ったときの喜びはすごく大きいし、これまでの経験値すべてが自分の財産になっています。これまで得たものを活かして、制作会社や他社の企画に出資をするだけではなく、自分でゼロから企画を立ててクリエイターを集めてヒット作を生み出していきたい。今抱いているのは、そんな夢です
「もっともっと引き出しを増やしたい」と意欲を見せる深山。幼いころから変わらず大好きなエンターテイメントの楽しさや希望を、これからも仕事を通して伝えていきます。
※記事の部署名等はインタビュー当時のものとなります。
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